2017年7月30日日曜日

サンフランシスコ電気自動車事情・電気自動車がこの先生きのこるには? Part-II


サンフランシスコ電気自動車事情・電気自動車がこの先生きのこるには? Part-Iの続きであります。今回は電池の話です。

電気自動車の性能と値段を決めるのは電池といっても過言ではないでしょう。

あまり容量を増やしすぎると車両価格が高くなるうえに、重量増加により電力当たりの走行距離(ガソリン車でいう燃費)が悪化します。現時点ではTesla Sの85(かそれ以上)が搭載する90kWhあたりが上限になるのではないでしょうか。Tesla Sの上級モデルはバッテリーだけで540kgになります。

‘eBayで売られていたTeslaのバッテリーユニット

上記写真はeBayに出展されていたTesla S用のバッテリーユニットです。Panasonicの18650を444本束ねることで5.3kWhの容量を実現しています。ちなみにその辺のラップトップパソコンの電池ユニットをばらしても、かなりの確率で18650がでてくるはずです。汎用電池で原価を抑えようというのがTeslaの設計思想なのでしょう。1kWhあたりの単価は$250で、他社より$100以上安いそうです。

Laptop電池ユニットの中にも18650が

我が家のBMW i3(2015)は22kWhと、Teslaに比べるとぐっと小さいバッテリーを搭載しています。バッテリー重量は204kg。こちらはSamsungのリチウムイオン電池パッケージを利用してるそうです。
BMW i3 Battery Pack (source: https://cleantechnica.com/2016/07/16/bmwsamsung-batteries-vs-teslapanasonic-batteries-better/)

1kWhあたりの重量を比べるとTeslaのほうが軽く、汎用の18650をたくさん束ねるという設計は有利なのかな、という気もします。

さて...

今後、世界中の自動車が電気式になるとしましょう。そして、それらの車はTesla式に18650をたくさん搭載している、としましょう。

このページによれば、18650電池一本あたり、リチウムは0.75g含まれるそうです。Teslaの5.2kWhバッテリユニットは444本の18650で構成されています。すなわち、バッテリユニットあたりのリチウム含有量は333グラム。

一台あたり12ユニットを搭載するとして、必要なリチウムの量はほぼ4kg。60kWhクラスのバッテリーを搭載するには、一台あたり4kgのリチウムが必要、という前提で話を進めます。

アメリカには2億5000万台の車が走っていますから、これらをすべて電気自動車に置き換えるのは10億キログラムのリチウムが必要となります。100万トン。アメリカだけで100万トンのリチウムが必要なわけです。

果たしてリチウムは足りるの?? という素朴な疑問が湧いてきます。

で、こちらのPDFに世界のリチウム消費量と産出量がまとまっています。2014年の数字ですが、世界のリチウム産出量は年間36000トン。アメリカの車を全部電気自動車に置き換えるには、世界中で算出されたリチウムすべてをアメリカの電気自動車向け電池に使ったとしても、28年弱かかることになります。

仮に年間36000トンの産出ペースを変えない場合、すべての産出リチウムを電気自動車用に加工したとしても、電気自動車の年間生産台数は900万台が限界という制約が生じます。Wikipediaによれば2016年の世界の自動車生産台数は年間9500万台ですから、自動車需要の1割しか満たせないことになります。

「じゃあリチウム電池を再利用すればいいのでは?」という考えも浮かびますが、こちらの資料(2011年)によればリチウム再利用のコストは採掘コストの数倍もあり、経済的にはペイしないようです。

前述資料によればリチウムの埋蔵量は1350万トンありますから、電気自動車の普及でリチウムが枯渇することはなさそうですが、産出ペースを増やすか、リサイクルのコストを劇的に下げないと「電池の材料が足らなくて電気自動車のコストが下がらない」事態がやってくる可能性があります。

参考にしたページ

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