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2017年9月1日金曜日

トランプ大統領に追い風か

早いもので8月も終わり。トランプ大統領が就任してから7カ月が過ぎたということになります。一方で、2018年の中間選挙まであと1年2カ月しかない、ということでもあります。中間選挙では下院435議席すべてと、上院100議席のうちの33議席が有権者の信任を仰ぐことになります。

そして、この中間選挙に向けた動きはすでに始まっており、トランプ大統領に追い風となるのでは、という与太話を書いてみたいと思います。

ダイアンファインシュタイン上院議員による「トランプ擁護」


一つ目は、サンフランシスコに地盤を持つ民主党重鎮、ダイアンファインシュタイン上院議員の動きです。(彼女はかつてサンフランシスコ市長を務めたこともあるそうです) 29日に地元サンフランシスコで開かれた公開インタビューで「トランプ大統領の弾劾はあるのか?」と聞かれたファインシュタイン上院議員は、弾劾の可能性については一切話さず「トランプ大統領は、しっかり学べばという条件が付くが、良い大統領になるのではないか。そして4年の任期を務めるのではないか」と答えています。
ダイアンファインシュタイン上院議員(民主)

  • 民主党支持者が多く
  • とてもリベラルで
  • 反トランプが多数派のサンフランシスコで
  • 民主党重鎮の
  • サンフランシスコに地盤をもつファインシュタイン上院議員が
トランプを擁護するというのはかなり異例なことではないでしょうか。つい2日前までサンフランシスコおよび対岸のバークレーでリベラルによる大規模なデモがあったばかりなのに、です。

Wikipediaによれば同上院議員は2012年選挙で67%の得票率という米国上院議員選挙での記録を持っているそうです。そんな彼女の支持率はUC Berkeleyの2017年7月調査によれば50%以下に低下しており、特に無党派層からの反発が強いとのことです。

今回のトランプ擁護ともとれる発言は都市部のリベラル層からの反発を招くのは必至でしょうが、それでも敢えて発言した裏には都市部のリベラルよりも、保守寄りの無党派層に頼ったほうがマシ、という判断があると思われます。


ナンシーペローシ下院議員による「左派も悪い」発言

ファインシュタイン上院議員がトランプ擁護発言をした29日、同じくサンフランシスコに地盤をもつ民主党重鎮のナンシーペローシ下院議員もメディアを驚かせる発表を行いました。週末にバークレーで起きたAntifaによる暴動をかなり強い口調で非難したのです。ワシントンポスト紙によれば、これは「民主党リーダーによるかつてないレベルの左派批判」とのことであり、実質的にはシャーロッツビルで起きたAlt-Rightによるテロ殺人の後にトランプ大統領がコメントした「どちらも悪い」発言の追認とも取れましょう。
ナンシーペローシ下院議員(民主)

当然民主党内やリベラル層からは反感を買っており、すでに来年の中間選挙で同じ民主党から立候補予定のStephen Jaffe氏は強い口調でペローシ議員を非難しております。

「ナンシーペローシはAntifaの非難はできるけどトランプ大統領の弾劾はできねーじゃねーか」みたいな感じで名指しでペローシ議員を批判してますね。ペローシ氏に「右寄り」というレッテルを貼って来年の中間選挙までに人気を下げようという意図が見え見えです。

こうしたペローシ下しの声がかかるのが確実だったのに、リベラル中のリベラルたるナンシーペローシ議員が敢えてAntifaを名指し批判した(=トランプ大統領の「どっちも悪い」発言追認)のは、やはり中間選挙へ向けてのなんらかの計算があると思って良いでしょう。


超党派6州知事連合による「トランプケア代案」の提案

まだまだあります。難航している「トランプケア」の代案を6州の知事が合同で提案した、という話です。それも共和党・民主党の協業による提案です。原案は読んでいないので記事を通した推定しか書けませんが

  • 医療保険加入義務付けは存続
  • ただしオバマケアのままでは保険制度が破たんするのも確実
  • 重要なのは若くて健康な加入者を増やすこと
あたりが骨子となっているようです。記事にある
 a temporary stability fund that states could tap to reduce premiums and limit losses

「掛け金を下げ、赤字を抑える一時的なファンド」という表現が多くを語っています。今のままだと加入者の掛け金上昇と保険制度の赤字増加が継続する(すなわち破たんする)という認識を共和党だけでなく民主党側も共有したというのはとても大きなポイントだと思うのです。トランプ大統領が選挙戦の頃から叫んでいた「オバマケアは終わっている」という主張が正しかった、ということを一部ではあるけれど、民主党側も認めているわけですから。
代案提唱者の一人、John Kasichオハイオ州知事(共和)

代案提唱者の一人、John Hickenlooperコロラド州知事(民主)

反トランプ路線では中間選挙に勝てない?

The Hillは、民主党が政治資金集めに苦戦していることを伝えています。今年前半の寄付金は共和党の7500万ドルに対し、民主党は半分程度の3800万ドル。富裕層はもともと共和党寄りですが、大きく差をつけたのは小口の寄付とのこと。一口$200以下の小口寄付で

  • 共和党は3300万ドル
  • 民主党は2200万ドル

この募金状況がただちに両党の支持率につながるわけではないですが、小口寄付の不振は民主党議員には相当効いているのではないでしょうか。いくらCNNがトランプ支持率低下を報道しようが、世のインテリ層がトランプをバカにしようが、現実は「トランプ路線は支持されている」「反トランプ路線は支持されてない」わけで、それを肌で感じとった民主党議員たちが現実路線を採用するのはごく自然な流れと言えましょう。




2011年12月7日水曜日

Occupy San Francisco強制排除。だが...

サンフランシスコのJustin Herman Plazaに陣取っていたOccupy San Francisco。市当局からの採算の通告にも関わらず自主的解散がなかったため、今朝警察が介入。強制排除となった。ぱちぱちぱち。ちなみに70名が逮捕された。→ソース

だがこの程度で引っ込むOccupyな方々ではない。

  • 市内の他の場所をOccupy
  • ゼネスト
  • Foreclosureされた住居を乗っ取る
など次の一手を考えているようである。本当に迷惑な連中だ。

2011年11月23日水曜日

要は税金の無駄遣い

Occupy San Franciscoに参加している人はテント住まい。トイレは仮設のを使えばいいが、シャワーはどうしているか?

こんな感じ

Rick Barkesdale and his girlfriend Sheryl Solomon came from Colorado Springs to join Occupy SF. Bakersdale says he joined the movement because it "absorbed" him. 
The two say they are willing to stay with the movement no matter how long it takes, even though dealing with so many different personalities can be "very tiring." On Monday, they took a shower in a homeless shelter nearby.
→コロラドからわざわざやってきて、サンフランシスコのホームレスシェルターのシャワーを使うわけですな。ただこの人達はシャワーを使おうとする気持ちがあるだけまだ清潔な方で...

San Francisco Officials Fear Disease Will Spread At Occupy Encampmentという記事によれば

  • ノミ・シラミの繁殖
  • パルボウイルス感染症(犬や猫の病気)
が確認されているという。要は疫病が流行りやすい状況ということ。それはそれで困った話なので市が税金を投入して清掃やら消毒やらシャワー提供やらしないといかんということ。そしてツケは地元住民に回ってくる。本当に腹が立つのぉ。

2011年11月19日土曜日

こいつらに仕事が無いのはウォール街のせいでも政治のせいでもなく、本人達の資質そのものによるのではなかろうか

昨日の「Occupyなんちゃらの連中は地元に戻って働いてください。メキシカンがやってる仕事くらいは奪えるでしょう。」の続き。

やはりPeople Behaving Badlyから。

昨日も書いたとおり、サンフランシスコはOccupy SFを「条件付き黙認」している状態。原則テントのみ。家具や調理器具は持ち込み禁止。ゴミ類は時々市当局がやってきて回収する。そして上の動画では「落書きされたドア」をめぐってOccupy SFの面々と市当局、そして取材しているKOFYの人達が衝突。

結局はOccupy側が勝ち、この「落書きされたドア」は引き続きOccupiedとなるわけだが、なんだろうかこの人達は。叫ぶ。奇声を上げる。罵声を浴びせる。これくらいのことしかできない。

これじゃ仕事が無いのも当然だろ。それをウォール街のせいにしてはいけない。

ちなみにドアには Fuck You! と書かれていたそうである。放送できないのでモザイクかかってる。

2011年11月18日金曜日

Occupyなんちゃらの連中は地元に戻って働いてください。メキシカンがやってる仕事くらいは奪えるでしょう。

サンフランシスコ市は本来路上生活は禁止されているが、昨今のOccupyなんちゃら運動に対しては
  • 区域限定
  • 調理禁止
  • 酒類持ち込みや飲酒禁止
  • テント以外の持ち込み禁止
などの規則を設けて事実上黙認をしている。下の動画は地元局KOFYの取材による「People Behaving Badly」シリーズ。上記の規則がいかに無視されているかがわかる。すごいのは大麻を育て、吸っているやつとか。(笑) でも、こういう人がウロウロしている地域には子供連れて買い物や食事しに行く気になれないよね。



動画の終わりの方に移動式簡易トイレが映るけど、その費用はすべて市が負担している。つまり税金。だが無制限に簡易トイレの設置をすることもできないから、やがては溢れる。溢れるとそのトイレは使用不可に。するとどうなるか...


商業ビルのトイレを使うわけである。それだけではない。そのビルにあるものを盗む。椅子、iPad、携帯、食糧、アイスクリーム...

次はオークランド。
 
犬禁止の公園に犬を連れ込む、というのも問題だけど、この「Occupy」の人達は実は地元民ではないのね。ベルリンとか、すごく遠いところから来ている。問題は...この人達が地元オークランドのホームレス施設やその予算を使いきってしまうこと。

そして、この動画には出てないが、彼らは地元経済にはほとんどお金を落とさない。しわ寄せはただでさえ苦しいオークランド地元住民にやってくる、と。

こんなクソ運動を支持している皆さん本当にありがとうございました。

2011年11月8日火曜日

TPP関係のデマもひどいね

Togetterにローソン 不買運動などというまとめがでていたので読んでみたがこれはひどい。最初に引用されている
TPP参加国の雇用が自由になり、ローソンが店員をベトナムで募集し日本店舗で採用する。彼等の平均月収はベトナム国内では2~3万円、だからコンビニ店員は3万円ですむ。これで競争力が付く。
という発言からもはや電波ゆんゆん。確かにベトナム国内の平均月収は日本よりは相当低いかもしれないが、そのかわり物価も安い。だが、日本に連れてきた瞬間から、彼らは日本の物価水準で過ごす必要がある。月給3万渡した所で住居や食事ができなければ日本で暮らしていくことは不可能であろう。つまり「ベトナムから労働者を連れてきて月給3万で雇う」などということは無理なのである。それくらい考えてからTweetするなりRTするなりすれば良いと思うのだが反TPP脳はそこまで回らず思考停止に陥るようである。

2011年11月3日木曜日

1%対99%という構図ではない

Occupy Wall Streetの流れを受けて全米各地で抗議運動が起きているが、当地カリフォルニアはオークランド市はその中でも最も先鋭化してしまった、と言ってよいだろう。昨日はOccupy Oaklandがゼネストを呼びかけ、デモ隊はオークランド港を封鎖。夜になり、一部がオークランド市街に戻り暴徒化。下記動画はその様子。

米国で前回ゼネストが行われたのは1946年。場所は奇しくもオークランド。65年ぶりのゼネストは残念ながら平和的には終わらなかった。夜が明けると...破壊と落書きだらけ。こちらの写真集も良かったら見ておくれ。

どうやら破壊活動を行ったのはOccupy Oaklandに便乗した活動家らしいが、そもそもの運動を呼びかけたOccupy Wall Streetの人達は重要な判断を下す必要がある。それは「1%対その他99%」の構図で行くのか、それとも「99%の中から急進派を排除するのか」という決断。

もし前者で行くのであれば、今後もこういった破壊活動が起きる都度Occupy運動は支持者を失うはず。

後者で行くのであれば、何を目指すのかという「運動の目的」を明確にする必要がある。99%という烏合の衆を目指したから急進派が合流する隙を生んだのであるから、もう一度存在目的から見なおさないといかんだろう。その場合、「1% vs 99%」という看板も捨てることになる。「俺達は99%だーーーー」という叫びも当然通用しなくなるだろう。

ま、「もちっと大人になれ」ってことだよね。

2011年11月2日水曜日

Occupy Oaklandの様子

基本的に平和裏にデモが続いているという話だったが、これは酷い。やられているのはWholefoods。


View more videos at: http://nbcbayarea.com.

昼間でこの調子なんだから、日が暮れたらどうなることやら...

2011年11月1日火曜日

ゼネストを呼びかけるOccupy Oakland

SFGate: Occupy Oakland: City braces for general strike
→オキュパイな人たちがゼネストを呼びかけていますよ、というお話。

Oakland市庁舎近辺でピケを張ってる草の根グループOccupy Oaklandにいくつかの労組が同調して、明日2日水曜日のゼネストを呼びかけている。指導者不在の同グループだが、今のところ市内の大手銀行Wells Fargo近辺で抗議集会を行なってから、オークランド港まで更新して港の労組に合流する、というものらしい。平和裏に進めば、ね。

呼び掛けに対する反応はまちまちで

  • 店を閉めるという地元商店
  • 通常通り営業するという商店
  • 参加表明した労組
  • 不参加表明した労組...教員組合は不参加→学生の勉強妨げるわけにはいかんからな
注目したいのは槍玉に挙げられているWells Fargoで「平常通り営業する」と宣言している。ん〜これで平和裏に一日が終わればOccupy Oaklandの人達もなかなかやるな、と思えるのだが。

2011年10月26日水曜日

大衆迎合主義の大統領 vs 辛口な自由主義候補

Occupy Wall Streetで始まった金融機関への抗議行動は、「教育費が高い」という形でオバマ政権への批判にもつながっている。その火の粉を振り払うためなのか、オバマ大統領は「学費ローン返済救済案」を持ちだしてきた。実は下記のような救済案は既に下院を通過している:

  • 返済額上限を、収入の15%とする
  • 返済開始後25年経過したら、返済残はチャラとなる
  • この救済案は2014年より導入される
この度明らかになったオバマ大統領案は↓:

  • 返済額上限を、収入の10%とする
  • 返済開始後20年経過したら、返済残はチャラとなる
  • この救済案は2012年より導入される
大盤振る舞いもさることながら、「2012年から」というのがいかにも次期大統領選挙を意識しまくり。


仮にこんな救済案が現実になれば...

  • 学費ローンを借りる側は真面目に返済することを考えなくなる
  • すなわち、学費が値上げされても「借りればいい」と思うようになる
  • 大学側はそこにつけこんでどんどん学費を上げる
  • やがて返済免除額が積み上がってこの仕組みは破綻する
  • ツケは将来の納税者に


もちろん、この案がそのまま法律になるわけではない。大統領は法律を作れないから、この案を元に法律を作ってください、と議会に頼む必要がある。その議会はあちこちで共和党が邪魔するから、そう簡単には可決されないだろう。

とはいうものの、人気取りのためにこんなクズ政策を持ち出すようではオバマ大統領ももうダメなのではなかろうか。

一方で...共和党で大統領選出馬表明をしてるロン・ポール氏は一味違う対案を出してきている。実に単純で

  • 連邦政府による奨学ローンなどやめてしまえ
というもの。上にも書いたように「低金利で資金を貸すから大学が学費を上げやすくなる」わけである。これは住宅におけるサブプライムローンと同じ構造だ。ならばそう簡単にみんなが大学に行けないようにすればよい。そうすれば大学は少なくなった学生を呼び込むために学費を下げる等の工夫をせざるを得ない。競争原理だ。

そのロン・ポール氏の学歴は:

  • ペンシルバニア州のGettysburg College(単科大学)を卒業
  • 一旦、就職
  • Duke University School of Medicineで薬学の学位を取得

となっている。当時は政府の就学ローンなどなかったので学費を稼ぐために一旦働かざるを得なかった。だが、学費もそれほど高くはなかったので、働けばなんとかなった、ということ。

参考にした記事:

2011年10月19日水曜日

この人達は何を要求しているの?

「99%の声を聞け」 貧困撲滅訴え世界同時アクションという記事から写真を引用:

「1%の連中は皆去れ!」という看板を掲げているそこの君! 例えばニューヨークの場合は、その1%の連中が市税の40%を負担しているわけなのだよ。その1%の連中が去ったら、残りの99%には増税が待っている。

ということを忘れて、この手の「Occupyなんちゃら」に参加している連中は馬鹿だと言わざるを得ない。

2011年10月16日日曜日

良くない雰囲気

Occupy Wall Streetという流れで発生した各地の抗議行動だが、なんか「現状の不満をぶち上げるだけ」という雰囲気になってないか?

動画はロスアンゼルスの抗議行動でインタビューに答える教員組合員=オバマ支持者
「米国の金融システムを牛耳るユダヤ人共はこの国から追放されるべきだ」

これ、マジに語っているのならOccupyなんちゃら、という運動は階級闘争ではなく、単なる人種間紛争になりかねない。みんな落ち着けっての。

2011年10月15日土曜日

オバマ政権は何か約束を果たしたっけ?

オバマ大統領の公約である国民皆保険制度(通称オバマケア)の実現が微妙になってきた。

WaPo: White House eliminates insurance program for long-term care

→長期治療を対象にした保険制度の設立をオバマ政権が断念しましたよ、というお話。

断念された法案はCLASS(Community Living Assistance Services)と呼ばれる制度で、病気や障害を抱えた患者に一日$50以上が給付されるはずだった。だが、オバマ政権はこの制度が「機能しない(Simply unworkable)」と判断し、撤回。

そもそも一日$50を給付し続けるには、このCLASSプログラムに参加するための掛金を高額に設定する必要がある。そんな制度に応募できる人がどれくらいいるのか、というお話。税金で補填しない以上、この国では国民皆保険制度は無理。そして国家財政は非常に厳しいので税金補填も無理。

つまりはオバマケアの実現も相当厳しい状況であろう。

で、今の大統領って何か公約を一つでも実現しましたっけ??

サンマテオ郡のForeclosure状況

Examiner: Foreclosure crisis lingering in San Mateo County housing market

→サンマテオ郡は他地域に比べるとForeclosure物件の消化が遅く、住宅市場の落ち込みが長期化しそうだ、という話。7月時点でのREO(銀行保有物件)は1万件

2011年10月11日火曜日

既視感

ギリシャの債務問題は随分前から指摘されていたし、欧州もそれなりに動いてきたのに、やはりどうにもならない所まで追い詰められつつある。で、どこかの金融機関が本当にやられそうになって初めて真剣な動きが始まる...わけではなく、やはり金融機関の救済とか破綻の延焼防止とかいう目先処理ばかりが続く。

というのは先のサブプライム〜クレジットクランチの時にも見られたパターンで、「Bailout Nation」にも「政府救済の典型」という形で整理されている。同じことが繰り返されるのであれば、「ギリシャはこのままなんとか問題先送りするけど、程なくもっと大きな危機がやってくる」ということになるはず。

2011年10月6日木曜日

Wall Streetに抗議するなら...

ウォール街占領デモは日本でも報道されているはずだけど、その参加者が語っている「抗議」の中には

  • 就学ローンを借りて大学出たのに仕事が無い。
  • 就学ローンを借りて大学出たのに負債返せるような給料の仕事につけない。
  • 高校ドロップアウトした17歳シングルマザーだけど仕事が無い。
みたいな、「それ、ウォール街じゃなくておまえの判断が悪いだけやろ」みたいなのが結構混じっていて、そういうのをテレビで取り上げるたびに「なんだかなー」という白けた気分になってしまう。お茶会のデモと大して変わらんじゃろこれじゃ。

納税者なら、こんな話に抗議するべきではないだろうか。→House of Cronies: Is Freddie Mac Incompetent or Corrupt?


  • CountryWideがFreddie Macに売ったモーゲージ債の多くが不良化した。
  • Freddieは不良率の高いモーゲージ債によって生じた損害を発行元に請求できる。
  • 結果、CountryWideを吸収合併したバンカメが損害分をかぶるになったのだが...
But proving that hundreds of thousands of loans were defective was a lot of work. Freddie only reviewed some of them, relying on a poor methodology that dramatically underestimated the number of defective mortgages. This increased losses to Freddie Mac -- losses that will eventually fall to Treasury and taxpayers.


→そのモーゲージ債を構成する78万件という住宅ローンを精査するのは負荷がかかるので「抜き取り検査で」買取請求価格を算定することになった。

  • CountryWide発行のローンの多くは返済開始後3-5年目で破綻確率が最高になる。
  • だが、Freddie Macが抜き取り検査したのは二年目以内が中心。
  • 結果、見かけ上の不良率が低下。損失見通しも下がったため、バンカメの支払額は低く抑えられた。
全件検査しなくても、適切な抜き取り検査をしていたらFreddie Macの回収分は数十億ドル増えたはずだ、ということがその後の監査で発覚している。その分、財務省=納税者にツケが回ったわけである。

この検査の偏りがなぜ生じたのかは不明だが、ウォール街を叩くのならこういう「損失だけは社会主義」という体質に重点を置くべきではなかろうか。

2011年9月30日金曜日

長期的な金融緩和は悪

リフレーションだとかなんとか騒いでいた人たちは元気なのかな? 確か「金を市中にジャブジャブにすればインフレ期待でみんな金を使うようになるし銀行は金を貸さざるを得ない」とかいうような理屈だったと記憶しているが現実には全くそんなことにはなっていないわけで。

で、本日のWSJにはFedの量的緩和政策を批判する記事が掲載されていた。

WSJ: Where Are the Bond Vigilantes?

以下、例によって適当な要約。

かつては米国国債は政策に機敏に反応して、政府の野放図な歳出を抑える仕組みになっていたのだそうな。クリントン時代に医療保険制度改革が提案されると長期国債の金利は急上昇。(10Yで8%!) 結果、クリントンは保険制度改革を断念する。そして、福祉関係の歳出に上限を設ける政策が決まると、反対に金利は下落。これがクリントン時代後半の景気拡大を後押しした、と。

時は流れて2010年。オバマ政権が(財政上かなり問題ある)医療保険制度改革を提案しても長期金利はさほど上昇せず。国債金利が政策に反応しなくなっている。この理由は米国国債の民間保有率が下がり、各国中銀やFedの保有分が増えているから。他国の中銀は米国国債の金利よりも自国通貨が対米ドルで上昇するのを嫌い、ドルを買うことになる。結果として、低金利の国債も引き受けざるを得ない、と。

特に新興国ではこうしたホットマネーの流入とコモディティ価格上昇でバブル状態になっていたのが、この二ヶ月間のドル高・コモディティ価格下落で明らかになったわけで。そしてその原因はやっぱりFedの超金融緩和に帰結する、と。

記事ではさらに長期的緩和政策のもたらす害悪を3つ挙げている。

  • 景気後退時の経済刺激ができなくなる。かつては金融緩和は「一時的」と決まっていた。だからこそFedが金利を下げると企業は一斉にその利益を得るべく一斉に借入をしたり、投資をしたりしたわけだが、万年低金利で張り付いたままだとそのような行動を取らなくなる。
  • 2つ目は日本でも見られた貸し渋り・資金ブタ積み。これは特に中小企業を直撃し、雇用が回復しない要因になっている。
  • 確定給付型年金システムの崩壊。カリフォルニア州年金は7.5%でブレークイーブン。国債金利が大幅に下がると他の高リスク手段で運用せざるを得ない。
大新聞でも金融緩和政策を批判する記事がでてくるようになったというのは、何か潮目が変わる前兆なのかな。

2011年9月28日水曜日

ギリシャのせいにするな!

MarketwatchのStop blaming Greece!という記事にはちょっと考えさせられた。

8月からの株価下落で米国の株式市場総額は約2.5兆ドルの価値を失ったそうだが、なんでそれが「3930億ドルしかない」ギリシャの債務が引き金になった、と言えるのか? 

という指摘。もちろん、ギリシャが全く無関係ということはないだろう。でも、これだけの下落をギリシャだけのせいにするのは変なんじゃないの? という指摘。

だとすれば。相場は欧州の動向で一喜一憂しているのではなく、別の理由で動いているということになる。それがなんだかはわからんけどさ。

2011年9月27日火曜日

金利を下げても意味が無い

この春、米国債市場に調整が入り住宅ローン金利が上昇しかかった時期に家を購入することを検討した。金利が上がればその分住宅価格は下落する。月々の支払はさほど変わらないが、高金利で借りておけば将来再び金利が下落した時に含み益を借り換えで現金化できる。(が、これ以上下がりようのない低金利で借りたら、借り換えることはできない)

が、その後は御存知の通り米国国債相場は「格下げ」を受けつつも上昇。金利は下落。そして10年債とほぼ連動すると言われる30年固定金利住宅ローンの利率は史上最低の領域に。

LAT: Mortgage rates drop to once unthinkable lows at less than 4%

→先週あたりは、充分な含み益を持っている借手なら3.75%に借り換えることもできたらしい。新規購入30年は4.09%で、これは1950年頃つけた史上最低値4.08%に肉薄する数字。

だが、ここまで金利を下げても新規購入・借換ともにあまり需要は増えていないという。理由は簡単で

  • 含み損を抱えている場合はそもそも借り換えできない
  • 含み益があったとしても、その多くは4.5%台で借り換えしてしまっている
さらに、貸倒れリスクを下げるために「新規購入なら頭金20%」「借換えなら充分な含み益&延滞なし」という条件が求められる。そんな条件を満たせる人はそうたくさんいない。

そ れ で も 借 り ろ ! というわけで、オバマ政権はこんなことも考えているらしい。
Mindful of that fact, the Obama administration is trying to encourage greater use of a program that allows borrowers with loans backed by Freddie Mac and Fannie Mae to refinance up to 125% of their home's value. The borrowers must have kept payments current on the underwater loans to qualify.
→含み損を抱えている借り手でも、延滞していなければ評価額の1.25倍まで借り換えできますよ、ということ。要は担保不足でも貸しますよ、ということだが、それでも借手は躊躇する。問題は金利の高さではなく、長期的に雇用が守られるかどうか不安だから。

ここまで緩和してもこの程度の景気なわけだから、この先金利が上がったときにどうなるか? それを考えると、住宅のようなでかい買い物を敬遠するのも当然であろう。それでも金融緩和すればなんとかなる、というノーベル経済学脳は爆発しろ。

2011年9月26日月曜日

金融緩和と実体経済

Minyanvilleの9月23日記事「With QE Out of the Way, the Real Economy Is Revealed」を興味深く読んだ。リフレーション政策マンセーと未だに叫んでいる人たちは必読では。例によって要点のみ抜粋。青字強調はmasayangによるもの。


In our current case, despite trillions in monetary and fiscal interventions, the overriding economic reality has not changed since 2009, or even 2001. The recovery, such as it was, was completely dependent on the government picking up the slack in economic flow that was destroyed first by the credit collapse of the housing bubble, and then the weak dollar as it “influenced” large and liquid businesses to invest capital offshore. There has been no private or sustainable effort to close the loop of economic activity through employment.
→ 何兆ドルもの金融政策・財政政策を打ってきた割には、アメリカ経済の現実は2009年以降(もしかしたら2001年以降)何も変わってない。「回復」は政府の景気刺激策に依存しており、民間が自発的かつ継続的に雇用を増やすような状況にはなってない。
Largely, the lack of employment reflects the actual economic potential of an economy no longer under the monetary influences of runaway credit. So much activity was built on the housing bubble (like the tech bubble before it) that nothing short of another asset bubble would do – and policymakers have tried hard to accommodate. The Fed disregarded the caution that the 2008 collapse exemplified and tried to rebuild the economy as it was in 2006.
→高失業率状態が続いているのは、経済がもはや金融政策の影響を受けなくなっているから。住宅バブル時には(ネットバブル時代と同様に)バブルに依存した雇用が生まれすぎたので、別のバブルが生まれない限りは雇用を生み出せない。
Lowering interest rates and embarking on quantitative easing (QE) were efforts designed to do two concurrent things: stoke inflation expectations and make safe investment expensive. By engaging in this willful destruction, the Fed at least recognized the fundamental problem of closing the loop on economic flow. Its thinking, flawed as it usually is, was that by increasing the cost of holding money, companies would invest in capital projects and consumers would yield to that calculus of money cost, exchanging their overwhelming desire to hold money balances out of rightful concern for reckless spending fueled by even larger and more damaging debt balances.
→低金利や量的緩和(QE)は二つの効果を狙っている。インフレ期待強化と、低リスク投資を難しくすること。現金保有コストを高くすることで、企業は積極的に投資し、消費者は積極的にお金を使うし、さらにはより積極的に借入を行うようになるだろう、というFedの考えは相変わらず間違っているのだ。
Instead, we now have the desperate situation where the temporary bridge of economic flow that was provided by unemployment insurance, food stamp assistance, and federal transfers to states has ended. The results should not have been surprising. In the past 12 months, 1.7 million people have exhausted their unemployment benefits, rolling off those transfers into nothing. State workers are falling into the same abyss, although they are at least transitioning from employment to the beginning of their 99 weeks (still an economic adjustment).
→だが経済をどん底に落とさなかった要因は失業保険であり、食糧配給券(Food Stamp)であり、あるいは連邦政府から州政府への支援だったのである。それらの制度も予定期間が終わりつつあり、過去1年で170万人が失業保険給付期間を終えている。完全に無収入になったのである。
A healthy economy is one that flows freely back and forth between businesses and consumers. The reality is that we have not seen such a system in more than a decade. Monetary policy after the tech bubble created the same conditions we are experiencing today, where jobs and capital investment were shipped overseas through willful dollar devaluation. All that trade money came back to the US in the form of foreign buying of agency debt – our trade imbalance was turned into another pillar of the housing bubble.
→健全な経済とは企業と消費者の間でお金が回る仕組みであるが、米国では10年以上そんな状態とは無縁である。ネットバブル後の金融政策はドル安をもたらし、結果として投資も雇用も海外に逃げるという今の状況を生み出したわけだ。アメリカから海外に流出したお金はFreddie/Fannieへの投資という形で米国に還流し、住宅バブルをもたらした。
And so the transfer of marginal import buying and trade dollars was repatriated domestically into housing debt, artificially closing the loop of economic flow. Now that price action in the housing market, and its subsequent credit production problems, is dead, there is nothing to artificially replace the previous version of monetarism. Marginal spending and investment flow that still goes overseas will only come back as US government debt, and that potential loop will eventually be destroyed by increased taxation (if the current administration is successful), owing to the now precarious position that monetary and fiscal policy has created in the misplaced and miscalculated hope of a self-starting recovery.
→だが住宅バブルが崩壊した今、米国にお金を還流させるのは海外からの米国債購入しか残されていない。最終的には(現政権がうまくいったとして)増税が待っている。
Quantitative easing was never designed to be a long-term "solution," only a temporary bridge to the recovery that economists took as a given. Because of their adherence to mathematical models and their historical extrapolations they still believe that our current economy is under cyclical influences. And so they are blind to the structural problems that are all too real, and in large part due to previous monetary exertions. Unfortunately, economists and policymakers believe that monetary policy does not impact the real economy beyond the short run, a principle they call monetary neutrality. Yet, as we are learning the hard way, monetary policy does have lingering and lasting negative effects.
→量的緩和は長期的な政策ではない。あくまでも短期的な「つなぎ」でしかない。ただしその「つなぎ」の前提となっているのは景気後退が「循環的景気変動」の一環という考え方であり、「構造的な要因で景気が悪化している」場合にはその「つなぎ」は役に立たない。このような場合、金融政策は問題の悪化と長期化をもたらす。
The recovery they hoped for and counted on was never really a possibility. It has simply become a question of potential – owing to neutrality, the Fed made the mistake of actually believing that economic activity in the 2002-07 period was a natural economic progression. The sad truth is that economic activity during the housing bubble was artificially high and did not represent true potential.
→Fedは2002〜2007年の経済拡大をアメリカの持っていた潜在的な力がもたらしたと信じている。悲しいがこれは間違えであり、住宅バブルによって人工的に引き上げられた結果でしかない。
The economy right now is simply reverting back to its real, unaltered potential now that consumers and businesses can no longer respond to monetary influences that are most definitely non-neutral. In other words, there was no chance for QE to do anything other than make the economy and markets worse. If there weren’t so many structural economic problems creating a renewed recession, the lack of additional QE should have been cheered.
→QE3なき今、アメリカ経済は「本来の」姿に戻ろうとしている。量的緩和政策が問題を悪化させるしかない以上、QE3がないというのは、むしろ喜ばしいことなのかもしれない。