以下、序盤だけネタばらし。
サウスパークの子供達の間でもiPadは大人気。そんな中、iPadを使っていたKyleは突然やってきたApple社員たちに拉致されてしまう。Kyleが何気なく「同意」していたiTunes利用許諾契約の中には「AppleがKyleの位置を追跡すること」「KyleがAppleの次期デバイス開発実験に参加すること」「その次期デバイスではKyleの口を他人の肛門に縫合すること」などが盛り込まれていたのだ。そしてそのデバイスとは(右図)...
いつものことだが、South Park制作陣の鋭い感性には驚かされる。世の中を一瞬騒がせたいわゆる「iSpy事件」報道が4月20日。そしてHUMANCENTiPADの放映は27日。一週間足らずで作り上げたのか?それとも、たまたま作っていたネタに合わせてニュースがでてきたのか?いずれにしても「旬」なネタであったことは確かである。
以下、この作品に込められた皮肉を数点。
(1) iTunes利用許諾契約
South Parkの子供達が(Kyle以外は)iTunes利用許諾契約を熟読してから「同意」していたのには笑えた。小学生達がこの長さの文章を、しかも、iTunesのUpdateの都度読んでいる、という設定。
以下は米国版だけど、終わりの方に確かに位置情報取得の件が記載されている。今回の話は、こういう内容に盲目的に同意している利用者達を皮肉っているのね。
To provide location-based services on Apple products, Apple and our partners and licensees may collect, use, and share precise location data, including the real-time geographic location of your Apple computer or device. This location data is collected anonymously in a form that does not personally identify you and is used by Apple and our partners and licensees to provide and improve location-based products and services. For example, we may share geographic location with application providers when you opt in to their location services.
(2) Geniuses
Apple Storeの「天才さん達」も結構楽しく描写されていた。「返品してもStore Creditで対応しようとする」「同等代替品で我慢させようとする」というくだりは、同じ目に遭った人なら爆笑できるはず。実際、ジーニアスの中にも給料の良いマクドナルドと言い切ってる人もいるようだし。
(3) タブレットの限界
中盤から登場してくるSteve Jobsは何度もKyleに対して「なんで契約書をちゃんと読まないんだ」と嘆く。そしてJobsはHUMANCENTiPADに組み込まれたKyleに、「読む」という行為を叩き込もうとする。
つまるところ、iPhoneもiPadも情報を「表示する」だけであり、その情報を読んで理解するのは人間そのものだ、ということ。どんなにユーザーインターフェースを良くしても、読まない人は読まない。にも関わらず我々はタブレットに「得体のしれないわかりやすさ」を期待している。あるいはタブレットがあれば賢くなれる、とまで思っている。阿呆だよね。(ちなみに作品の中でも、Jobs自身が「世界中の利用者がiPadに入れる情報はクソばかりだ」と語っている。)
(4) 値段
そのiPadの値段。Cartmanが本物iPadを買いに家電量販店に向かうが、64GB+3Gにオプションつけてほぼ$1000という値段を見て「こんなのとてもじゃないけど買えないから、東芝のHandiBookで我慢しなさい! iPadの半額で、できることは同じなんだから!」と母親に諭される。なんだかんだいって、米国庶民にはiPadってのは「高い」んだよね。
(5) Steve Jobs対Kyle父
最後はApple教に堕ちたKyleの父親(弁護士)が登場してオチを迎えるのだけど、実に深い言葉があった。「Appleは人と人とを繋げてきたし、人と人とが情報で繋がるHUMANCENTiPADには、確かに未来がある。だけどもう少しゆっくりできないかな?」とJobsに語りかけるのである。
Appleは成長路線を維持できるのか?
Kyle父の発言からはいくつかの意味を汲み取れる。
- Jobsがもっと長生きできるように、という願い。
- 人と人とを繋げて流れる情報量を増やしても、その全てを人間は消化できるわけじゃないから、もっとゆっくりしてもいいんじゃないか、という思い。
- Appleがもう少し製品開発周期を延ばせないか、という提案。
三つ目はAppleの成長路線維持に関わる問題であろう。
Appleの強みの一つは「PCやAndroidみたいなコモディティ製品とは一線を画した高価格高付加価値製品・サービス」の提供にあるわけで。すなわち、Apple製品が市場を席巻したらもはやAppleの強みはない。だからこそ、iPodがMP3再生機市場に溢れる前にiPhoneという新市場に打って出たわけだ。そのiPhoneも天井が見えてくる前に、AppleはiPadでタブレット市場という新天地を創造しようとしている。
でも、この高付加価値市場開拓路線はいつまで続くんだろうね、という点をSouth Park作者たちは突いてきている。確かにタブレットはノート型に取って代わる新市場かもしれない。でも、その次は?そもそもタブレット市場は本物なの?高付加価値市場開拓路線の将来が見えないから、製品開発〜投入の周期を短くしているのではなかろうか。そんな中、買ってもまもなく新型が出てくるとわかっていても新型に飛びつく「真のApple教信者」はどれくらいいるのだろうか。むしろ、最初から「安かろう悪かろう」でコモディティタブレットを買うか、「そんなのなくても良い」と割り切るかを選択する層が今後は増えてくるのではなかろうか。
South Park作者たちは、Kyleの父親を通して「もちっとゆっくりしろよApple」という助言をSteve Jobsに送ったのである。
でも、この高付加価値市場開拓路線はいつまで続くんだろうね、という点をSouth Park作者たちは突いてきている。確かにタブレットはノート型に取って代わる新市場かもしれない。でも、その次は?そもそもタブレット市場は本物なの?高付加価値市場開拓路線の将来が見えないから、製品開発〜投入の周期を短くしているのではなかろうか。そんな中、買ってもまもなく新型が出てくるとわかっていても新型に飛びつく「真のApple教信者」はどれくらいいるのだろうか。むしろ、最初から「安かろう悪かろう」でコモディティタブレットを買うか、「そんなのなくても良い」と割り切るかを選択する層が今後は増えてくるのではなかろうか。
South Park作者たちは、Kyleの父親を通して「もちっとゆっくりしろよApple」という助言をSteve Jobsに送ったのである。
以上、実際にはウンコぶりぶりで放送禁止用語満載だった番組を元にAppleの成長路線を真面目に語ってみましたよ。まあ、各自HUMANCENTiPADをじっくり鑑賞して検証してくだされ。警告: お子様には不向き。下ネタ嫌いな人にも不向き。下品な描写多数。
おまけ(1)
HUMANCENTiPADの先頭にいるおっさんは日本語がうまい。「なんだ、なんだこれ〜」の発音とかKyleを「かいる」と発音するあたり、とてもアメ人とは思えない。もしかして日本人?
おまけ(2)
上昇を続けるApple株だけど、P/Eは一年前の20.1から16.7まで低下している。これを割安と見るか、成長鈍化を織り込みつつあると見るか。市場はすごく賢いのかも。
アップル教が「その製品を保有することによる他ブランドに対する優越感」で成立しているのであれば、「iPadがタブレット市場を席巻することは起きない」もしくは「タブレット市場はマイナーなまま終わる」と思うのだが、どうだろう。おまけ(3)
上昇を続けるApple株だけど、P/Eは一年前の20.1から16.7まで低下している。これを割安と見るか、成長鈍化を織り込みつつあると見るか。市場はすごく賢いのかも。
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