2017年8月31日木曜日

米国IT求人の片隅を覗いてみる...

この投稿、本当はQiitaに出したかったのですがなぜかQiita側が受け付けてくれないのでやむを得ず本ブログに保存しておきます。


先日とあるところで「アメリカにおけるAgile開発ってどれくらい浸透しているの? ペアプログラミングとか本当にやってるの? 一人で設計から開発からテストまでこなすって本当?」等などの質問を受けたのでちょっと調べてみました。



これはバンクオブアメリカの求人広告で、勤務先はニュージャージー州。Pegaを使ったワークフロー処理関係の開発と思われますが

  • ユーザーと共に要求定義の見直しを行い
  • スケールする高品質のシステムの設計と開発を行い
  • 品質保証や受け入れテストにおいてユーザの支援を行い
  • 5年以上の.NETもしくは他のオブジェクト指向言語の開発経験があり
  • Pega Roboticsでのワークフロー自動化開発経験があり
  • マイクロソフトOfficeのオートメーション開発の経験があり
  • オブジェクト指向設計パターンのしっかりした知識があり
  • 再利用性、テストのしやすさ、スケールしやすさ、保守のしやすさなどを考慮したアーキテクチャを実現できる能力があり
  • モデリングツールを使いこなせて
  • TDD/BDD、リファクタリング、テスト自動化フレームワーク、継続的統合、継続的デリバリの経験があり
  • Gitなどを使ったリリースマネージメントの経験があり
  • ペアプロや日々のスタンドアップミーティングなど、Agile開発に明るく
  • これまで働いてきた分野での問題領域に関する知識を持っていて
  • できれば...
  • Functional Programmingの経験があり
  • 分散システム開発の経験があり
  • Angularなどを使ったWebフレームワークでの開発経験や、RESTfulサーバの開発経験があり
  • 銀行系システムの経験があることが望ましい


こういう技術者をバンカメクラスの金融機関が直接雇用してバリバリ開発を進めてしまう、というのが米国のIT現場の姿の一端でしょうね。SI業者へのアウトソースも存在しますが、開発速度や柔軟性が求められる分野は圧倒的に内製なんですね。

ちなみに気になる給料ですがこれはGlassdoorから参考値を探せます。

 おそらく初年度は10万ドルくらいではないかと。間接コストを含めるとバンカメ側の予算はこの二倍かそれ以上かかっているのではないかと思われますが、それでも総合的に見れば「安い」からバンカメはアウトソースしないのでしょう。

1999年公開の映画「Office Space」では米国にもシステムインテグレータ的な会社が残っていました。要求定義する人と開発する人とテストする人は別だった時代。

あれから15年ちょっと経過。


アメリカのIT産業は様変わりしたと言って良いでしょう。

2017年8月28日月曜日

Alt-Right対Antifa顛末

なぜ白人至上主義者はデモ会場をCrissy Fieldに選んだのか?
続・なぜ白人至上主義者はデモ会場をCrissy Fieldに選んだのか?

「合法的に銃を持ち込めて」「(リベラルな)サンフランシスコ市が決定権を持たない」国立公園の一部であるCrissy FieldにてAlt Rightグループがデモ行進を行うということで警戒された8月26日でしたが、直前になってAlt Rightグループがデモ中止を宣言。代わりに同じくサンフランシスコ市内のAlamo Squareにて記者会見を行うということになりました。

すかさずカウンター側がAlamo Square近辺に集結。

結局Alt Rightはさらに記者会見会場を変更し、サンフランシスコからちょっと離れたPacificaへ。残されたカウンターは無届のまま市内をデモ行進するも、この日は特に暴力沙汰もなく平和に終了。

翌、27日日曜日。この日は別のAlt-Rightグループがバークレー市内でデモ行進を宣言。当局はデモの許可を出さず。一方でカウンターがバークレー市内に集合。Antifaとして知られる一部の過激派が暴れ始めます。この様子は地元メディアはもちろん、全国ニュースでも流れていました。

ワシントンポスト...Black-clad antifa members attack peaceful right-wing demonstrators in Berkeley (黒ずくめのAntifaが、右派の平和的デモを襲う)

英国Daily Mail...Anarchy in Berkeley: A hundred black-clad antifascists with 'no hate' signs storm rally, pepper spray leader of conservative Patriot Prayer group and clash with cops (100人規模のAntifaグループが保守派グループや警察と衝突) →写真が結構生々しいので閲覧注意。

地元局KTVU...Anarchists create menacing mood in Berkeley; 13 arrested, six injured
→カウンター(左派)の「勝利宣言」を紹介している。「我々はバークレーをヘイトグループやナチスから守った」 ただし見出しを見ればわかるように、彼らはAnarchistとして扱われている。

差別もヘイトもよくない。そんなことは当たり前。
だけど、反差別や反ヘイトが暴力を正当化することはあり得ない。
今回の件で地元の比較的リベラルなメディアをも敵に回してしまったのは失策ではなかろうか。


2017年8月24日木曜日

続・なぜ白人至上主義者はデモ会場をCrissy Fieldに選んだのか?

なぜ白人至上主義者はデモ会場をCrissy Fieldに選んだのか? の続編であります。言論の自由を訴えるAlt-Right主催のデモ開催まであと二日。今日はいくつかの動きがありました。

Feds grant permit for ‘Free Speech’ rally at Crissy Field

まずは連邦政府が今回のFree Speechデモに対して正式に「許可」を出したことを地元紙Examinerが伝えています。その理由は予想はされていましたが
“We cannot deny a permit to anyone planning to exercise their First Amendment rights based on their political stance or beliefs,”
政治的主張を表現する機会を奪ってはならない。たとえその主張がどんなものであれ、です。なぜなら、合衆国憲法修正一条でその権利が保障されているから。

もちろん、サンフランシスコ市側は文句は言うことでしょう。実際、Ed Lee市長らは今回の主催者側を徹底的に批判しています。もし、会場をCrissy Field以外で選んでいたら、市側は安全上の理由などでデモを不許可にしていたはずです。この点においては、Alt-Right側の戦略はまずは成功したといって良いでしょう。

一方で懸念されていた銃器持ち込みについてはNational Park側が明確に「禁止する」と言ってますので、まずは一安心ではあります。ただし金属探知機を使った本格的な身体検査をするのかとか、今一つはっきりしない点は残ります。

あちこちで開催されるカウンターのデモ

Alt-Rightのデモに反対する人たちは市内のあちこちで集会を計画しています。上記リンクに詳細が載ってますが、規模的にはCivic Centerに集合してCrissy Fieldまで歩くのが一番でかくなりそうです。

私はむしろこのカウンター側の暴走を心配しています。三々五々的に集合しますし、特に身体検査もないわけですから暴力的なAntifaの連中が途中から入り込む可能性は排除できないし、むしろかなり高いと言えましょう。

地元ニュースではデモが開かれる土曜日は商店や飲食店を臨時休業するところが増えそうだと言ってました。

まあ平和裏にデモが終わることを祈るのみです。

8月24日追記

在サンフランシスコ日本総領事館から注意喚起のお知らせきました。
デモに関する情報には十分注意して頂くとともに、興味本位でデモが開催される場所周辺には近づかないようにし、ご自身の安全確保に努めて頂くようお願いいたします。
SF Examinerは当日の立ち入り制限区域や、公共交通網の運休などを報じています。
上の図のZone 1はデモ会場のCrissy Fieldを含む区域。Marina側の入り口から徒歩でのみ入れる。入り口では持ち物検査をされ、武器はもちろん一定以上の大きさの持ち物は持ち込めない模様。ゴールデンゲートブリッジ側の駐車場も制限がかかる模様。観光客の皆さん、土曜日は近寄らないほうがいいよ。


Zone 2は交通制限がかかる区域。Zone 2に限らず、土曜日の市内は交通網の混乱が予想されるので自家用車はもちろん、公共交通網もあてにしないほうがよさそう。

くわしくはMuniの運行情報を参照のこと。


8月25日追記

直前になって、Alt-right側が「デモ中止」を宣言しました。ただしデモの代わりに記者会見を開くと言っており、市側も警戒を解除していません。また、カウンター側はCivic CenterおよびAlamo Parkにてデモを行うとしており、Antifaの連中が騒ぎを起こす可能性は全く消えていません。またMuniの運休も解除されていないので、市内の交通は混乱が予想されます。不要不急の外出は控えるのが吉かと。

2017年8月19日土曜日

なぜ白人至上主義者はデモ会場をCrissy Fieldに選んだのか?

サンフランシスコ地元紙のExaminer、8月14日記事に‘White supremacist’ patriot rally coming to San Francisco — counter-protest already plannedというのが出てました。白人至上主義者が26日土曜日にサンフランシスコ市のCrissy Fieldに集い、デモ行進を行うという内容です。

Crissy Fieldというのは
ゴールデンゲートブリッジにほど近い、上の地図にある赤丸あたりの公園です。緑の丸で示された中心街からはかなり外れた地域です。

デモ行進ならより多くの人達に見てもらえるように中心街に近い区域を選ぶのが常道ですが、なぜ彼らは人の少ない公園を選んだのでしょうか? 上記記事によればこういうことらしいです。

  • Crissy FieldはGolden Gate National Parks Conservancyの一部であり、サンフランシスコ市の管轄ではない。デモの許認可はサンフランシスコ市ではなく、National Park Serviceが管轄となる。
  • すなわち、連邦政府レベルの話。連邦政府レベルで「表現の自由」「集会の自由」を否定するようなことはまず無理なのでデモは当然許可されてしまった。と思われる。
  • さらに... 2010年のFederal Firearms Law(PDF)の定めるところにより、「National Parkには銃を持ち込める」。拳銃はもちろん、ライフルなど狙撃銃も、です。
サンフランシスコ市街ではAntifaが抵抗を訴える看板を出してるのをちらほら目撃。

おそらく衝突必須で嫌な予感しかしないのですが、もしこの日(8月26日)にゴールデンゲートブリッジでも行ってみようか、なんて考えてる人が身近にいたら「やめておけ」と伝えるのが良いでしょう。

8月19日追記:
Crissy Field集会での戦いに備えた「トレーニング」を呼びかけるカウンター側と思われる看板。これはやはり平和裏には終わりそうにないね。

8月22日追記:
National Park Serviceはまだデモに対する許可/不許可を保留している模様。決行/中止は金曜日に判断されるそうな。

2017年8月17日木曜日

日食と太陽光発電

来る8月21日月曜は北米各地で日食が観測されます。ここカリフォルニア州は残念ながら皆既日食は見られませんが、最大75%ほど欠けた太陽は目にすることができるようです。霧がでなければ、ですが。

Wikipediaによれば前回北米で皆既日食が観測されたのは1979年。実に38年ぶりの出来事です。そして今回、米国各地は歴史上初めて「日食による太陽光発電への影響」という試練にさらされることになります。(欧州は2015年に経験しているので課題は明確になっています)

太陽が月の影に入り始めると、太陽光発電は急激に出力が低下し、皆既日食中は発電能力がほぼゼロに落ちます。皆既日食が終わると発電能力は休息に回復し、日食が終わればもとに戻ります。皆既日食に至らない場合でも、発電能力は通常時よりは下がります。

発電と送電が分離されている米国では、送電網の運用管理をISO(Independent System Operator)という電力会社とは独立した非営利会社が担当しています。カリフォルニア州ではCA ISOが担当しており、日々の電力需要や発電実績をかなりこまめに公開しています。
8月16日のカリフォルニア州再生可能エネルギー発電量
上のチャートはCA ISOが発表した2017年8月16日の再生可能エネルギー発電実績です。黄色の線が太陽光発電で、日の出とともに出力が上がりだし、昼のピークで10000MW近くまであがり、その後日没まで出力は急降下します。

今回の日食はカリフォルニア州では午前9時から11時半。ピークは10:20で、北カリフォルニアでは最大75%、南カリフォルニアでは55%ほど欠けます。だいたい9000MW発電している状態の時間帯が一時的とはいえ最大6000MW以上の発電能力を失い、そして急速に復帰するわけです。
8月17日のカリフォルニア州電力需要予想
二番目のチャートは8月17日のカリフォルニア州の予想電力需要です。平日だと午前10時前後は大体29000MWの電力需要があります。太陽光はこの需要のほぼ1/3を提供しており、日食のピークにおける影響はかなり大きくなります。おそらくはガス火力発電や水力発電の出力をこまめに調整して乗り切ることになるのでしょうけど、この「運用でカバー」が可能なのも、まだ太陽光発電がマイナーな存在だからであって、もしこれ以上太陽光発電が増えたらこういう「逃げ」が打てなくなり、日食の日は計画停電を行う必要がでてくることでしょう。

ちなみに日食がなくても、増えすぎた太陽光発電に対処するために

  • 日没後の電力需要に備えて、昼間から火力発電をスタンバイさせておく(発電しないけどガスは燃やし続ける)
  • 昼間のピーク時に太陽光発電を止める
というオペレーションが日々行われているのが現実です。

これはいくらなんでももったいないので、ピーク時の電力を他州の送電網に売り込むというアイデアもあるらしいのですが、エコを追い求めているカリフォルニア州の電力は他州よりもかなり高めでそんなものをわざわざ買う変わり者が他州にいるのか、という問題も生まれてきます。

じゃあピーク電力を電池でためておけ、というアイデアも当然でてくることでしょうけど、それは拙ブログで過日書いたとおり、電気自動車用のリチウムイオン電池需要との巨大な食い合いが発生するので、やはり高価なソリューションとなる可能性が高いわけです。

今回の日食を機会に「果たして太陽光発電は本当にエコなのか」を社会全体で考え直すきっかけになればよいなぁ、と願っております。




2017年8月14日月曜日

IonicとAWS CognitoとFacebook認証連携(前編)

プログラミングの話です。興味ない人は読まないほうがいいです(笑)

Ionicを使って携帯アプリを色々と開発しておりますが、いつも認証周りは鬼門なのでここらで一発AWS Cognitoを活用してみようと思い数日間試行錯誤しておりました。実現したいのは

  • アプリケーションへのログインにFacebook認証を使う
  • 認証済ユーザにはAmazon Web Serviceのリソースへのアクセス権を一時的に与える
  • 携帯側はIonicで開発
この3点です。

ちょっと前(といっても一昨年くらいか)までは、このような場合にはCordovaのInApp Browserで認証させて、http://localhostにコールバックかましてトークンを取り出して、なんていうのが定番でしたが、もうそんな時代じゃないのですね。
じゃあどうするのよ、って調べるとどうやら@ionic-native/facebookというのを使えば良い模様。あとは@ionic-native/facebookとAWS Cognitoを連携させるだけですね。楽勝でしょこんなの。(注: 楽勝=StackoverflowやQiitaもしくはGithubの事例を参考にすれば出来上がり)

ところが...

意外にもこの組み合わせを試した事例が少ない。そもそもAmazonのドキュメントを漁ってもCognito User PoolにおけるFederation Identity Providerと、Cognito Identity PoolにおけるAuthentication Providerの役割を明確にしたものが見当たらず、色々と試行錯誤の連続でありました。最も参考になったのはaws-cognito-ionic2というプロジェクトでしたが、おそらくこの作者もFacebookやTwitterの認証連携は実装していないと思われます。(このCloseされたIssueでそう推察しました。だってIt's just a matter of adding additional buttons and some code では実装できないから)

今回頭を悩ませたのは以下の問題です。
  • Cognito User Poolは「User ID」「Password」が必須であり、オプションでEmail等も管理できる。
  • Federated Loginが返してくる情報には「User ID」に使えそうなものはあるが、Passwordはついてくるはずないし、Emailももらえないのが普通。(嘘だと思ったらTwitterやFacebookのOauth戻り値を見よ)
  • かような状況で、Federated Loginの結果からCognito Userを生成できるのか?
実際に悩んでいる人はいるようで、Facebook認証はうまくいくのにgetCurrentUser()がNullを返すという質問がStackoverflowに上がってました。これに対する回答は「お前は何を言ってるんだ?」的な内容で、思わず▼ボタンをクリックしましたが私にはカルマが足りないのでマイナス評価を付けることはできませんでした。

私が出した結論は(間違ってるかもしれませんが)「Federated Loginの結果、User Poolに新規ユーザレコードが生成されることはない」です。Cognitoの設定画面にはAttribute Mappingの設定もあり、いかにもFederated LoginからUser Poolにシームレス連携()ができるような雰囲気が醸し出されてますが、これは罠です。きっとそうです。違う!という人は是非ご指摘をお願いします。

あ~話が長くなりました。年取るとこれだからダメですよね。

ということで、今回は@ionic-native/facebookを使って認証する部分までの実験結果です。ソースは小生の作りかけばかりのGithubに入ってます。Tag=MVP2からダウンロードするなりForkするなりしてください。

以下、設定でのメモ。

Facebookアプリの設定
  • AndroidとiOSの両方を設定すること
  • その際、Ionicアプリのconfig.xmlにあるバンドルIDをFacebook側に登録しておくこと
  • 要は@ionic-native/facebookのインストール方法に従うこと
  • Android用設定でkeytoolコマンドを使う場面がありますが、これはJava SDKについてくるコマンドです。
  • OAuth Callbackは今の時点では適当に設定しておいて大丈夫です
AWS Cognitoの設定
  • 後編で設定します


IonicのsidemenuにFacebook認証ボタンを付けただけですが、まずはLogin/Logoutできるようになりました。後編ではAWS Cognito(のIdentity Pool)との連携について書きます。


2017年8月8日火曜日

Googleさんの例の件

まずお断りしておきますが、ソフトウェア開発を始めとする知的創造作業における能力が性別や性癖で決まることは決してない、と私は信じております。すご~くできる奴はすご~くできる。そうじゃない人達は自分も含めて正規分布っぽく存在している。そんだけ。

従いまして、今回Googleをクビになった例の社員の解雇理由が「女性のステレオタイプ化」というのは、まあしょうがないかな、と。女性だからソフトウェア開発できない、という命題は「偽」なわけですから。

一方で、議論の元となった「Diversity」の話は強いチーム育成を考える人達にとっては脅威となりうるのでここにメモを残しておきたいと思いました。

Googleのことですから、チーム強化の際にBest of the Bestを集めるということはそれほど珍しくはないでしょう。それは私たち多くのように平均値±1σに収まるような人たちではなく、+2σとか+3σとかのレアな能力の持ち主です。

極論すれば「ある分野で文句なしにトップの人材を一人」探している場合、そのポジションは男性一人か女性一人となります。トランスジェンダーかもしれないしそうじゃないかもしれない。人種的にも一種類。ストレートかもしれないしゲイかもしれないしバイかもしれない。チームが小規模になればなるほど、そのチーム構成は世間のDiversityから乖離する可能性は高くなります。

そしてそのような小規模採用をチーム単位で繰り返していく結果、会社全体のDiversityが世間一般とかけ離れることも当然あり得ます。

それはまずいと経営層が騒ぎ出し、チームでの採用に口を出すというのがDiversity重視経営の怖いところです。「3人の枠全員がインド人男性だと? それはまずい。 一人か二人は女性にしろ。できれば黒人かヒスパニックで。LGBTならなおうれしい。」みたいな干渉が発生し、結果トップクラスからはちょっと距離がある人たちが採用されるようなことになったら、チームの価値は揺らいできます。

繰り返し強調しておきますが私は別に黒人やヒスパニックがインド人より劣っているといってるわけではないです。男性が女性より優れてるとも思いません。でもトップ3人を探していたら、集まった全員がたまたまインド人男性だった、なんていう可能性は排除できない。それだけの話です。そこに民族性や性癖の話を持ち込むのはトップを目指す集団なら「やってはいけない」オペレーションだと私は考えます。



D3.jsで間欠時系列データを表示するには?

趣味と実益を兼ねて(意味不明)株価チャートをd3.js使って表示するという作業をしていた時期がありました。ちょっと検索するとわかりますがCandlestickやOHLCチャートをd3で表示する事例はたくさんあります。

が...

いろいろ試した限りではこれらのチャートはd3.time.scale()を使っておりまして、月足や週足なら全く問題ないことはわかりました。日足でも土日休日にちょっと隙間が生じる程度ですからまあいいでしょう。でもIntradayで1分足とかやろうとすると場がしまってる間がおもいっきり空白になってしまいます。

d3.time.scale()が使えないとなると選択肢は2つしか思い浮かびません。

一つは時系列データを配列として格納し、d3.linear.scale()で表示。横軸はd3.svg.axis().tickValues()で時刻を表示。

もう一つのやり方はやはり時系列データを配列として格納しますが、d3.ordinal.scale()で表示するやり方です。横軸には時刻を入れます。

どちらのやり方もローソク足はきっちりと隙間なく表示されますが、zoom/pan操作の実装でいろいろと面倒になります。

配列として格納する場合、zoomやpanで配列範囲外が描画領域に入ってきた場合、なんらかのガードをかける必要があります。これがおもったより面倒でした。

Ordinalで表示する場合はクリック先(タップ先)の値を逆引きする実装が面倒になってきます。tooltip表示とかですね。d3.eventから拡大率をもらって、それを元のScaleに掛けて、d3.bisectで逆引きする、みたいな感じですかね。

なんとかしてこのあたりをすっきりと実装したいのですが...やっぱScaleを自ら実装するしかないんですかね。

と、特にオチのない話でした。

参考:
Create D3 x-axis that excludes weekends and holidays
Time axis: Remove scale points with no data



2017年8月7日月曜日

オバマケアは崩壊しているか?

トランプ政権=オバマ前大統領が実現した国民皆保険制度(オバマケア)を奪い取る悪の政権、みたいな報道が目立つわけですが実際のところどうなのよ? という気持ちで調べてみました。
Source: https://lysistrata.commons.gc.cuny.edu/2017/04/19/obama-vs-trump-important-qualities-of-a-u-s-president/

まずオバマケアのおさらいです。

日本の保険が社会保険と国民健康保険に分かれているように、米国でも「企業が従業員に福利厚生の一環として医療保険を提供する」場合と、「個人や世帯が医療保険を申し込む」場合とに分けられます。

この後者の「個人や世帯が医療保険を申し込む」際に、掛け金や通院・処方薬の自己負担分を国や州が補助しますよ、というのがAffordable Care Act(ACA: 通称オバマケア)です。補助金を出すのだから各世帯必ず加入してくださいね加入しないとペナルティ(増税)がかかりますよ、という仕組みです。政府はhealthcare.govというサイトを用意して、加入を推進してきました。


では実際にオバマケアで各世帯はどれくらいの負担が発生するのでしょう?

この算出がなかなか難しい。というか、面倒くさい、わかりにくい。色々な条件から掛け金や、通院・処方薬の自己負担が算出されるのです。

まず医療保険を管轄するのは連邦政府ではなく州ですから、州ごとに条件は異なります。ここではカリフォルニア州を前提に話を進めます。その上で、以下のような条件を加味する必要があります。

  1. 保険でカバーされる範囲
  2. 州からの補填があるか否か
  3. カリフォルニア州のどこに住んでいるか
  4. 年齢
  5. 喫煙者か否か

1は通院や処方薬の自己負担を決める要素です。掛け金が安い保険は、総じて通院や処方薬の自己負担額が大きくなります。例えば「一回の通院あたり500ドルまでは自己負担。それを超える部分は4割自己負担。処方薬は年間500ドルまでは保険会社が負担し、それ以上は自己負担」みたいな感じになります。

これだと低所得世帯はとても苦しくなるので、掛け金や通院・処方薬の自己負担分を国や州が補填しますよ、というのが2です。低所得世帯に厚くなります。

3は詳細不明ですが、居住地により掛け金や補填の枠が決まっているようです。

4と5は自明で若い人や非喫煙者は総じて負担が軽く、年寄りや喫煙者はリスクが高い分掛け金も上がる、ということです。

これだけの要素を網羅的に調べるのは苦痛ですのである程度条件を絞ります。
  • モデルケースA: Fresno(郵便番号93740)に在住する世帯年収5万ドルの家族。2017年で夫45、嫁35、子供8歳と5歳。
  • モデルケースB: San Francisco(郵便番号94108)に在住する世帯年収95000ドルの家族。2017年で夫45、嫁35、子供なし。
いずれも喫煙せず、妊娠はしてないという前提にします。なお、世帯年収はその地域の中間値としました。ソースはこちら
Fresnoは赤い印のあたり。San Franciscoはその左上のほう
カリフォルニア州の場合、Covered Californiaという組織が保険商品を選ぶためのサービスを提供しています。こちらのリンクからアクセスできます。まず、両モデルケースが2017年にオバマケアで支払う掛け金を算出してみます。

モデルケースAは、世帯所得が低いのでオバマケアとは別のMedi-Calというカリフォルニア州が提供する医療保険制度に申し込むことが可能ですが、敢えてオバマケアを選ぶこともできます。その場合、掛け金は一番安いもので月額たったの$4。すばらしい! 一番高いもので月額$1250.20となります。いずれも国や州から毎月$776の補助金を受け取った後の金額です。

月額$4~$1250と幅が広いですが、$4ではどのようなベネフィットが得られるかというと...

  • 指定された病院でしか保険が適用されない
  • 一家族当たり年間6300ドルまでの医療費は自腹
  • 世帯当たり年間12600ドルまでの医療費は自腹
  • 一家族当たり年間500ドルまでの処方薬は自腹
  • 世帯当たり年間1000ドルまでの処方薬は自腹
ちょっとわかりにくいですが、年間$48の掛け金($4x12)を払うことで、世帯当たり年間$13600を超える医療費については保険会社が全額負担する、というわけです。年間$13600までは自腹となります。

ではモデルケースBはどうなるでしょうか。世帯所得があがるのでMedi-Calという選択肢はありませんし、政府や州からの補助もでません。結果、月額掛け金は$654.28~$1703.2という幅となります。モデルケースAと違ってこちらは子供なしでこの金額です。では、一番安い月額$654.28の掛け金でどのようなベネフィットが得られるかというと...

なんと! モデルケースAとまったく同じなのですね。すなわち

  • 指定された病院でしか保険が適用されない
  • 一家族当たり年間6300ドルまでの医療費は自腹
  • 世帯当たり年間12600ドルまでの医療費は自腹
  • 一家族当たり年間500ドルまでの処方薬は自腹
  • 世帯当たり年間1000ドルまでの処方薬は自腹
すなわち、年間$7851.36(654.28x12)の掛け金を払った上に、年間$13600までの医療費は自腹。病気もケガもしなければ年間出費は$7851で済みますが、重い病気やケガを負ったら年間$21000くらいまでの出費を覚悟する必要があります。その金額を超えて初めて保険会社が負担してくれるわけです。

自己負担額を減らしたければ毎月の掛け金を上げればよいのですが、これもやはり高くつきます。例えばBluecrossの月額$1603の保険に入れば、医療費の自己負担はゼロとなります。また病院や医師の限定もなくなります。ただし病気やケガがなくても年間$19236におよぶ掛け金が飛んでいきます。

カリフォルニア州の場合、世帯収入$95000だと以下のように課税されます。

  • 連邦所得税...17.78%
  • 州所得税...6.35%
  • 社会保障税...6.2%
  • Medicare Tax...1.45%
だいたいオバマケア以外で32%ほど持っていかれます。ここに年間で$7851(8.2%)~$19236(20%)の医療保険掛け金を乗せようというのですから、「そこそこ軌道に乗っている」自営業や個人事業主には実に重い負担となります。このあたりを整理すると、下の図のようになります。
年収5万ドル世帯が最も安い保険を選んだ場合
年収95000ドル世帯が最も安い保険を選んだ場合


年収95000ドル世帯が最も高い保険を選んだ場合
掛け金の安い保険は医療費の自己負担が大きいですが、自己負担を超える分は保険会社がカバーしてくれるので「医療破産」はなくなります。それをオバマケアの最大の利点と称賛することには私は異論を唱えません。

ただしそのためのコストは中高所得世帯に重くのしかかっていることに注意するべきです。所得移転の一環と捉える人もいるかもしれませんが、そもそもの医療費を抑える努力をせずにこのような政策をとれば、遅かれ早かれ制度そのものが崩壊します。

実際、カリフォルニア州のオバマケア掛け金は去年が13%値上げ今年は12.5%値上げです。年間12.5%の値上げペースが続くということは5年で掛け金は倍増するということになります。

トランプケア(敢えてこの呼び方にします)になると、医療保険に加入できない世帯が大量に発生する、という観測がありますが、実はオバマケアのままでも加入をあきらめる世帯は発生しますし、すでにそうなりつつあります。

2016年、まだオバマ政権だった時ですら160万人がオバマケア加入を断念していたわけです。この傾向は続いており、2017年7月の時点では200万人を超えたという推定もあります。無保険による増税ペナルティを受けてでも、オバマケアに加入しない世帯が増えているわけです。このしわ寄せは...オバマケアの掛け金増加で中高所得層にさらに跳ね返ってきます。悪循環。

トランプ政権はもちろん、共和党・民主党は党派を超えてこの問題に取り組むべきだと私は考えます。トランプ政権や共和党のプレゼンテーションが下手なのも問題ですが、オバマケア見直しを鬼畜の仕業のように非難するリベラルな皆さんは、上記数字をよく読んで「オバマケアは持続不能な政策」であることを認識してくださいな。


2017年8月3日木曜日

サンフランシスコ車上荒らしを視覚化してみる

サンフランシスコの名物は「ケーブルカー」「ゴールデンゲートブリッジ」そして「車上荒らし」。とにかく車上荒らしが多いのです。

ちょっと古い記事ですが7月にはサンフランシスコ市警が急増する車上荒らしに警告を出していました。車内に物が置かれた状態で車を離れるな、という警告です。車中になにかあれば連中はあっという間に窓を割って車内から物を持っていきます。たとえ無価値であっても。盗られるものは無価値かもしれませんが、車のガラスはしっかりと修理代がかかります。

さて、どれくらいの頻度で車上荒らしが起きているのでしょうか。それを視覚化できるサイトがあります。

https://www.crimemapping.com/

期間や犯罪の種類を入力して、地図上に犯罪が起きた場所とその種類を表示できます。検索条件に

  • What...Vehicle Break-in/Theft
  • When...07/15/2017~08/02/2017
を指定してみました。
サンフランシスコで発生した車上荒らし・7/15~8/2

期間を絞ったのはこのサービスが一度に1000件以上の記録を表示できない仕様だからです。7月15日からの約3週間で実に942件の車上荒らしが発生しています。これは年間16000件のペースですが、2015年には年間25000件以上の車上荒らしが警察に届けられているので、上図はまだ少ない期間だったと言えましょう。

サンフランシスコの10倍大きいニューヨークも犯罪データベースを公開していますが、このデータベースを見ると車上荒らしは年間で7000件いくかいかないかの件数です。ニューヨークの1割しか人が住んでないサンフランシスコという地方都市で、ニューヨークの3~4倍も車上荒らしが起きている現状は異常といってよいでしょう。

なぜこんな状況になってしまったのかについてはまたの機会に書きます。


2017年8月2日水曜日

サンフランシスコの低所得者用賃貸住宅に申し込みが殺到

もう語りつくされた感がありますが、サンフランシスコの賃貸住宅は需給がひっ迫しており、家賃がとんでもないことになっております。

サンフランシスコの家賃平均値 ソース rentjungle
上のチャートはRent Jungleによるサンフランシスコの家賃平均です。2017年6月の数字だそうです。

  • 1ベッドルーム家賃平均=$3500 (38万5000円程度)
  • 2ベッドルーム家賃平均=$4637 (51万円程度)
  • すべての家賃平均=$3803 (41万8000円程度)
家賃が高いのは今に始まったことではありません。サンフランシスコは建築規制が厳しく、物件は常に不足気味です。だったらもっと建築規制緩めてどんどんアパート建てればよいと思うんですが、それをやると既存物件の価格も下がってしまいます。そこで市が考えたのが...「賃貸物件のうち、一定割合の部屋は低所得者用に安い家賃を設定することを義務付ける」というプログラムでAffordable Housingと呼ばれてます。

ここでいう「低所得者」とはその地区の世帯収入中間値(Median)の85%以下しか収入がない世帯をさします。このAffordable Housingへの申し込みが殺到しているという記事が本日の地元紙San Francisco Examinerに掲載されていました。


  • 1751 Carroll Aveに建設されたアパートのAffordable Housingは120件。申込は4126件。競争率30倍。
  • 72 Townsendに建設されたアパートのAffordable housingは7件。申込は300件以上! 競争率は43倍以上!! 
「低所得」といっても年収$71000ドルまでは申し込めるそうです。ざっと780万円。そして家賃が収入の40%は越えないように抑えられているということなので、おそらくは$2350程度が賃料ではないかと。ざっと26万円ですね。

ということでまとめますと...

「年収780万円クラスの世帯が、家賃26万の賃貸物件に『安い!』と叫んで抽選覚悟で申し込みする」

というのが今のサンフランシスコの状況なわけです。狂ってますね...

2017年8月1日火曜日

サンフランシスコ名物ケーブルカー・私服捜査官による乗車料金徴収調査

サンフランシスコ名物のケーブルカー。本日の地元紙Examinerは、ケーブルカーにおける料金徴収について報じています。

サンフランシスコ名物のケーブルカー・Powell線
観光で乗る人は始発駅で事前に料金を払うことが多いかと思いますが、途中から乗ることももちろん可能です。その場合、現金で車掌に払うか、日本のSuicaを思いっきりダサくしたClipperカードで払うことになります。

今回問題となっているのはこの途中乗車した人達からの現金徴収のありかたで「そもそもちゃんと徴収しているのか?」「徴収したお金を車掌がネコババしてないか?」というあたりに私服捜査員による監査が入ったそうです。結果は...
  • 路線によっては3割以上の確率で徴収しない
  • 徴収してもレシートを発行しない(=車掌がネコババ)
という状況なようです。自分は地元民なので知ってたけど。

記事によればケーブルカーの売り上げは年間1000万ドル(11億円)で、その3割は現金で払われるとか。その現金支払の1割をネコババすれば30万ドル(3300万円)ですから車掌がそういう悪いことを考える可能性は排除できないでしょう。

実際、記事では監査中に数名の車掌が横領容疑で逮捕されたと報じられています。

とはいうものの、観光客が圧倒的に多いケーブルカーではキャッシュレスにすることは困難でしょうから、今後もこの「ゆるい」仕組みは生き続けるのではないでしょうか。

参考

  • ケーブルカー料金(2017/8時点)...$7
    • 4歳以下は無料
    • 老人と身障者は深夜・早朝のみ割引あり