Wikipediaによれば前回北米で皆既日食が観測されたのは1979年。実に38年ぶりの出来事です。そして今回、米国各地は歴史上初めて「日食による太陽光発電への影響」という試練にさらされることになります。(欧州は2015年に経験しているので課題は明確になっています)
太陽が月の影に入り始めると、太陽光発電は急激に出力が低下し、皆既日食中は発電能力がほぼゼロに落ちます。皆既日食が終わると発電能力は休息に回復し、日食が終わればもとに戻ります。皆既日食に至らない場合でも、発電能力は通常時よりは下がります。
発電と送電が分離されている米国では、送電網の運用管理をISO(Independent System Operator)という電力会社とは独立した非営利会社が担当しています。カリフォルニア州ではCA ISOが担当しており、日々の電力需要や発電実績をかなりこまめに公開しています。
8月16日のカリフォルニア州再生可能エネルギー発電量 |
今回の日食はカリフォルニア州では午前9時から11時半。ピークは10:20で、北カリフォルニアでは最大75%、南カリフォルニアでは55%ほど欠けます。だいたい9000MW発電している状態の時間帯が一時的とはいえ最大6000MW以上の発電能力を失い、そして急速に復帰するわけです。
8月17日のカリフォルニア州電力需要予想 |
ちなみに日食がなくても、増えすぎた太陽光発電に対処するために
- 日没後の電力需要に備えて、昼間から火力発電をスタンバイさせておく(発電しないけどガスは燃やし続ける)
- 昼間のピーク時に太陽光発電を止める
というオペレーションが日々行われているのが現実です。
これはいくらなんでももったいないので、ピーク時の電力を他州の送電網に売り込むというアイデアもあるらしいのですが、エコを追い求めているカリフォルニア州の電力は他州よりもかなり高めでそんなものをわざわざ買う変わり者が他州にいるのか、という問題も生まれてきます。
じゃあピーク電力を電池でためておけ、というアイデアも当然でてくることでしょうけど、それは拙ブログで過日書いたとおり、電気自動車用のリチウムイオン電池需要との巨大な食い合いが発生するので、やはり高価なソリューションとなる可能性が高いわけです。
今回の日食を機会に「果たして太陽光発電は本当にエコなのか」を社会全体で考え直すきっかけになればよいなぁ、と願っております。
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