2011年11月1日火曜日

Androidのバージョンがばらばらだから何だって?


なんかこのTechCrunchのCharted: Android Fragmentationという記事があちこちで紹介されて「Androidはサポートに不安」みたいなことを煽っている人達がいるようだけどさ。アップル専門のジャパネットの人とか。このままAndroidが叩かれるのも可哀想なので、iPhone/Android両者のファンとしてちょっといくつか指摘しておきたい。

まずは「OS更新だけが大事なのか?」という話。

確かにTechCrunchの記事だと初代GSM iPhone以来、OS更新は3年後までという慣習があるように見える。だが初代GSM iPhoneを持っていた人ならわかると思うがGPSもなければデータ通信がEdge止まりの初代iPhoneには大した使い道はなかった。せいぜい写真撮ってそれをピンチ拡大して「すごいでしょ。メールするね。どうせあんたは家に帰ってからパソコンでしか見えないだろうけど」と自慢するくらいの高級玩具だったのだ。

初代iPhoneのCPUは遅く、後継機の3Gと共に主記憶が128Mと小さかったので「ささやかな」使い方をする利用者以外は3GSが誕生した2009年6月で無価値になったと思って良かろう。結局、二年の命だったのである。そこに3年近くのOS更新を続けたAppleの姿勢は評価したいが「だから何?」というのが二年で買い換えた利用者の正直な感想である。

あとね、GSM iPhoneは当初App Storeもなければ何のアプリもないiOS 1で届けられたんだけどさ。それがiOS 2でApp Storeが使えるようになり、iOS 3でCopy & Pasteができるようになりました、っていうのが実情なわけで。
これってバージョンアップというよりは「未完成のままGSM iPhoneを市場に投入ちゃったから追いかけで完成形にした」というのが正しい表現じゃないかな。なのでTechCrunchの表も全部緑にするんじゃなくて「二年近くかけて完成度が100%に近づいた。最後までマルチタスクには対応でききなかったけどね。」としてほしかったね。

次にAndroid電話市場のお話。

確かにTechCrunchの記事にあるとおり、Android電話は様々な機種が出回っている。それもそのはずで、Appleと違ってオープンな規格なわけだから、参入障壁は低い。もちろん、通信機器なわけだから対象市場となる国々の規制を遵守する必要があるので誰でも気軽に参加できるわけではないが、だとしてもこれまで通信機器を作ったことがある企業が「いっちょ乗ってみるか」と考えたのは当然であろう。雨後のタケノコのように色々なAndroid携帯が生まれたのは自然なことだったのである。

だがAndroidも当初は完成には程遠い規格だった。初代Android G1を予約購入した経験から言うが、GSM iPhoneに負けず劣らずの酷さだった。(Androidは最初からマルチタスクだったけどね) 

  • 2008年10月の登場時点ではVersion 1.0。
  • 2009年1月…1.1
  • 2009年4月...1.5
  • 2009年9月…1.6
  • 2009年10月...2.0
  • 2010年1月...2.1
  • 2010年5月...2.2

とバージョンアップは続く。AndroidもiPhone同様「二年かけて完成形に近づけた」というのが実態であろう。

TechCrunchの記事が取り上げた2010年後半以降は、Androidのバージョンアップ速度も緩くなり、2010年末に2.3系が登場して以降は枝番のマイナー改訂が続いているだけである。TechCrunchが同様の記事を一年後に書けば、話は随分変わっているのではないかな?

Androidの場合、iPhoneと違って規格を決める側とそれを実装に取り込む側とは別となる。実装に取り込む側が慎重になりすぎれば、製品として投入する時点では既にOSが型遅れとなってしまう、ということになってしまう。しかも「最新版」の命は上に上げたように「最短一ヶ月」「最長五ヶ月」しかなかったのである。結果として、TechCrunchの表にあるように「誕生当初からOSが最新ではない」という製品が市場にあふれることになる。このような哀れな機種は市場の受けも良くなく、あっという間に「半額」「無料」となり、その多くは「なんだか知らないけどとてもお得だから買ってみた」という層のもとに届けられる。こういう人達には「Gingerbreadのほうがいいですよ!」と話をしたところで全くの無駄であろう。「何それうまいの?」という答しか返ってこないはずである。

また、Android携帯を「敢えてFeature Phone(日本で言うガラケー)」のように売る事例もある。例えば低所得者層をターゲットにしているCricket Wirelessの場合「Music Plan」という契約で月額$55の利用料を徴収しているが

  • 音楽ダウンロード無制限
  • 着信音ダウンロード無制限
  • 通話は1000分まで
  • データ通信は500MBまで(GMail, Google Maps, YouTubeなどGoogle関係は除外)

という内容。低価格高機能端末の基盤としてAndroidが選ばれただけで、実質は「Feature Phone=ガラケー」といってよかろう。こういう使い方をする利用者にも「Gingerbreadにしましたか?」と聞くのは野暮である。

ということで、Android携帯のOSが最新版でないことはそれほど騒ぐほどのことでもないのだよ。

以下、おまけ:

それでも「やっぱり旧OSでいるのは嫌だ!」という場合はどうすればよいか?

答えは簡単。自力でOSを入れ替えるのである。例えばCyanogenModなら、ここ(http://www.cyanogenmod.com/devices)にあるだけの機種がGingerbreadベースでサポートされている。発売元による保守が打ち切られても、コミュニティが支えてくれるというのはオープンソースであるAndroidの決定的な優位点であろう。ちなみに自分の持っているAndroid G2はHTCによるGingerbread公開が遅れに遅れたので、CyanogenMod 7.1に入れ替えてしまった。(その直後、HTCは正式にGingerbreadを公開したが、もうどうでもいいや)

CyanogenMod対象外機種や、対象だけど自分で入れ替える自信がないという人はどうすればいいか? 

  • そのまま我慢して使う
  • 素直に「情弱のための最高環境」iPhoneを買う
  • 比較的人気があってメーカーのサポートも厚いAndroidを買う...ヒント 安売りしてない機種

というところかな。

余談の余談。Android市場とiPhone市場の違いなどを…

米国の話ね。iPhoneも4S登場で旧機種の一部は「無料」となってしまった。ただし、この「無料」というのは「毎月きっちりと回線料金を払える人を対象」にしたものである。具体的には「Credit Check」と呼ばれる与信審査があり、これに合格した人達だけが「無料iPhone 3GSを購入」できる。無料といっても実質は回線代金の中に組み込まれた割賦販売であるから、途中で焦げ付かせないように信用を確認するわけですな。

だが米国には様々な人々が住んでおり、このCredit Checkに通らない人がたくさんいる。所得が低い、留学生で就業できない、ローン返済を焦げ付かせた前歴がある、不法移民なため、などなど理由は様々。

当然、そういうCredit Checkに通らない人に携帯電話を売るという商売も成立するわけで。前述のCricket Communicationや、MetroPCSVirgin MobileBoost Mobileなどが有名所。信用ならない人達を相手にするわけだから携帯端末を割賦販売するわけにはいかない。基本、端末は売り切り。そして一般的にはこの手の客は所得がそれほど高くないので端末に何百ドルも金を出すはずもない。ならば安い端末を用意するしかない。

従来はそこにFeature Phoneが存在したわけだが、Android市場における過酷な競争は「売り切り可能な価格帯のスマートフォン」も生み出した。前述のCricketが売ってるAndroidは「縛り無し・$75」だし、MetroPCSが売ってるプリペイドAndroid(=売り切り)も$50くらいから揃っている。このような市場はAppleが最初から放棄している戦場なので「Feature Phone vs Android」という戦いになっているが、付加価値アプリケーション開発の容易さからAndroidが優位になっていくであろう。

米国市場は 生活に余裕がある人達が選ぶiPhoneや高級Androidその他大勢の廉価Android という感じで市場は収束していくのではないか。Apple教信者の皆さんが心配するほどAndroidの未来は暗くはない。

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