2011年6月24日金曜日

雇用契約もよく読もう・Skypeのストック・オプション事例

Business Week: Why Some Skypers Are Seeing Red
→最近Skypeを退職したYee Lee氏を襲った不条理

シリコンバレーに限った話ではないが、当地の企業、特に新興企業は優秀な人材を確保しつつ、目先の人件費を抑えるためにインセンティブ・ストック・オプション(ISO)を活用することがある。ISOは「予め定められた価格で株を買う権利」なので、頑張って働いて株価を上昇させれば結構な額の財産を手に入れられることになる。

典型的なISOは

  • 入社後1年で、その社員が入手できるオプション総量の1/4が与えられる
  • 以後、月々1/36づつ与えられて
  • 4年で全てのオプションが社員のものになる
という形式をとる。これは「せめて1年は腰を据えて働いてもらい」「できれば4年は頑張ってもらいたい」という設計なのであろう。

そして上記記事で報道されているYee Lee氏も、入社時にそのような内容の雇用契約に署名をした。問題は...どこの会社も同じような雇用契約の中に、Skypeは独自の記述を一行盛り込んでいたことだ。それは「5年以内に退職する場合、ISOは会社が買取る」というもの。

その一行の存在を知らなかったLee氏は、入社一年後、25%のISOが割り当てられた時点で他社への転職を決意。MicrosoftがSkypeを高値で買い取ったわけだから、懸命な判断だと思ったのだろう。だがSkype社側は「残念でした〜 あなたのISOはありません〜」と通告。

さらに。Lee氏はSkypeが買い取ったISO代に対して課税されることに。まさに踏んだりけったり。

この「5年以内の退職ではSkypeがISOを引き取る」という規定は、EbayからSkypeを買い取ったSilver Lakeという投資家グループが盛り込んだもの。理由は「優秀な人を長期的に確保したい」ということらしいが、果たして正解だったのだろうか。4年かけて全てのISOを手に入れ、あと1年我慢しろと言われたら、「とにかく1年間はクビにならなければいいや」という心理が働くのではなかろうか。

この記事は今後どうなるかについては記述されていない。確かなのは「Skypeは社員に新条項を知らせていなかった」ということと「会社が持って行ってしまう権利があるってのは、譲与(vest)という定義に合わないのでは?」という疑問が残ること。

さてさて、Microsoftが買取るSkypeは果たしてやる気ある優秀な技術者を確保できるのであろうか。

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