2011年6月9日木曜日

Steve Jobs古墳(別名・Apple新本社)建設に反対する

既にあちこちで報道されているが、AppleのSteve Jobs CEOがCupertino市に対して新社屋建設計画の説明を行った。下記はその模様を伝える動画。
市側とJobs CEOとのやり取りは時に冗談が飛び交う微笑ましいもので、むしろ新製品発表の時より元気があるんじゃないかと思えるくらいのものだった。

  • 現在のApple本社はCupertino市Infinite Loopにあるが、そこに全社員9000人は入りきれない。
  • そこで市内のあちこちにオフィスを借りている。それも「安っぽい」やつ。
  • この度AppleはHP社がCupertino市内に保有していた土地を買いあげた。
  • そこに12000人を収容できる社屋を建設したい。
  • 世界に誇る技術をもつ建築家が設計する世界最大の円形建造物で、平面ガラスは一箇所も使いません!(キリッ

というのが要旨。動画の中でJobs自身が区画計画などを図を駆使して説明してるのでそれを見ていただければ大体の様子はわかるはずだ。

だが、この計画は地元民にとっては大きな影響がある。地図で説明しよう。

図左側に囲ったのが現在の本社。この回りに複数のオフィスが分散している。で、図右にある台形の区画を買いあげたので、そこに新社屋建設をしたい、と。

問題は、この新本社建設によってPruneridgeという道が潰されること。そこを通って高速280を使っていた住民は遠回りを余儀なくされる。当然、渋滞も激しくなろう。

人口6万もないCupertino市に12000人収容、しかもそれが一箇所の高速道路出入口に集中するというのは無理がある。(注: 現在のAppleは280号のDe Anza出口そばにあるが、85号のStevens CreekやDe Anza出口も使えるので、交通量はある程度分散されている)

Jobs CEOは「現時点でもシャトルバスなどを使って渋滞軽減に努めているし、今後はさらにシャトルバス増発をする」と説明している。だがシャトルバスの輸送力は決して高くはないし、前述のように遠回りを強制される地元民の助けにはならない。

自分はSteve Jobsを尊敬しているし、Apple製品も大好きだ。だが、この新社屋は「本当に、AppleやCupertino市のためになる」のだろうか?

説明会ではこんなやり取りがあった。

市側: 新社屋がCupertino市民に与える利益は?
Jobs: AppleはCupertino最大の納税者です。新社屋建設が許されなければ(隣町の)Mountain Viewなどへの引越しも考えます。

私はこのやり取りは二つの問題を抱えていると思う。

一つは、Cupertino市がAppleに頼り切っていること。Appleの恩恵があるから予算を確保でき、教育水準があがり、教育熱心な家庭が集まって不動産価格が上昇する、という好循環を生むことができた。AppleがCupertinoから出て行ったらこの循環は途切れ、逆回転しかねない。計画を承認すれば、この流れは維持できるし、建設が終わる2015年までは特需も期待できる。

もう一点。Jobsは慢心しているのではないか。本当にCupertino市にも貢献したいのであれば、引き続き研究開発を強化し、固定費などは削る努力をすべきではないか。社屋分散による機会損失回避を否定はしないが、その場合であってもJobsいう所の「安っぽい」建物でいいのではないか。ただし、地元住民への影響を最小限に抑える工夫には知恵を使う。そういう動きがないことに、私はJobsの(あるいはAppleの)傲りを見出すのである。傲れるものは久しからず。この計画はAppleが峠を越えたという指標ではないか。

ところでJobsはこの新社屋予定地に大きな思い出がある、と説明している。少年時代、周波数測定装置を探していたJobsはPalo Altoの電話帳で「Packardさん」を探して電話する。小さな町だったので、Hewlett Packardの関係者はその一件しかなかったわけだ。測定器を売ってもらったJobs少年は、夏休みのトレーニーをPackardさんから勧められる。その場所こそ、この度の新社屋予定地だったわけだ。

Jobs王はその思い出の土地に強大な古墳を建造したいのかもしれない。だが、地元民は必ずしもそれを歓迎するわけではない。

本件はこれから色々と揉めることだろう。拙ブログでも適宜取り上げていきたい。

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